2021.09.2

Post Production Re-lux

今シーズンから新たに取り扱いを始めたPost Production。

革靴の修理工房、某革靴ブランドで経験を積まれた甲斐氏が立ち上げたブランドです。

当店ではブランドを代表する定番モデルの”Re-lux”を仕入れさせて頂きました。

モデル名はRELAX&LUXURYからとっており、玄関で靴を履くときに紐を結ばずに楽に履けながらも品のあるスタイルを実現できるというデザイナーの想いから誕生しています。

アッパーの革にはベビーカーフを使用しています。一般的に生後半年以内の仔牛のカーフと言いますが、その中でも生後三ヶ月以内の仔牛の革をベビーカーフと呼び、牛革の中でも最高級として扱われています。非常にキメが細かく、滑らかで柔らかい手触りが特徴です。

ベビーカーフは革自体が薄く紳士靴にはあまり使われませんが、その中でも厚みがあり紳士靴にも使える部位をデザイナー自身が厳選して使用しています。

モデルのベースとなっているのはいわゆるベルジャンシューズ。欧州貴族の室内用として履かれていたシューズで、本来はヒールが低く、スエードなどの柔らかい革を使い心材を使わずに踵を潰して履く靴です。

ポストプロダクションのRe-luxは完全な外履き仕様に作られており、ヒールは紳士靴にしてはやや高めの25㎜に設計(一般的には20㎜が多い)、履き口はスポッと履けるように広めに、それでいて小走りをしても踵が抜けないようなフィッティングを実現する為にオリジナルの木型(ラスト)を製作しています。

ちなみに木型(ラスト)とは、靴を成形する上で一番重要なものでこれで履き心地やサイズ感の全てが決まります。下の画像が木型と言われるものです。

今はほとんどプラスチック製ですが、昔は木で作られていたので木型と呼ばれています。ALDENで言えばモディファイドラストなんかが有名ですね。

これに革を被せて釣り込んで靴の形を成形していくのですが、この木型をPost Productionはオリジナルで開発しています。何度もサンプルを作って履いて修正を繰り返してデザイナーが納得のいくものを完成させるので、オリジナルの木型を完成させる事は実はとても手間とコストがかかります。

次に靴の製法ですが、マッケイ製法と言われるもので作られています。マッケイ製法は中底とアッパーの革とアウトソールを一緒に縫い合わせる製法です。下の画像を見ていただくと分かりますが、中底に縫い糸が見えています。

アウトソールを見ると糸が貫通しているのが分かります。

グッドイヤー製法に比べると縫い糸が内側に寄っているのが特徴で、中底とアウトソールを見ると見分けがつけ易いです。

ちなみにこちらがグッドイヤーウェルト製法の靴です。

ウェルト部分(コバ)に出し縫いと言われる縫い糸が走っており、アウトソールに縫い付けられています。
上記のマッケイ製法に比べると縫い糸が外側に寄っているのが分かるかと思います。

また、マッケイ製法の方が縫い目のピッチが太めに縫われています。これはグッドイヤーのように細かく縫うと中底の強度が弱くなる為です。

このマッケイ製法の良さは靴の作りが軽くしなやかで、ソールの返りが良いのが特徴です。ソールの返りが良いと歩いた時に靴が足にしっかりついてくるので、このRe-luxのようなローファーは踵が抜けにくく履き心地の良さが生まれます。

マッケイ製法は靴の構造上、ソール交換の修理をすると中底の強度が弱くなるのでオールソールは難しいとも言われますが、靴の履き方や状態にもよって1〜2回はオールソール交換の修理が可能です。
※素足で履くと汗が中底に直接染みてしまい、革が痛む原因になるのでなるべく避けて下さい。

ただ、マッケイ製法の修理は同じミシン穴に針を落として縫う技術が必要とされるので、修理の際はご相談下さい。

最後におまけの話ですが、踵を見ると小さな穴が空いています。

知らないと不良だと思ってしまう方もいますが、これはアッパー(革)を木型につりこむ際に釘で留めた跡です。

木型に革をしっかりと固定して作る為のもので、職人による手作業で作られた靴にはこの穴が空いています。

逆に機械で大量生産されるような靴にはこの穴はありません。

ですので、この小さな穴は職人によって丁寧に作られている証であり決して不良品ではありませんので、ご安心ください。

日本の靴職人の手によって完成され、デザイナー甲斐さんの想いが詰まったローファー。是非一度お試し下さいませ。

Post Production “Re-lux”
COLOR : BLACKDARK BROWN
SIZE : 4(24㎝)、4.5(24.5㎝)、5(25㎝)、5.5(25.5㎝)
PRICE : ¥75,900-(税込)

※サイズは普段のスニーカーの-1.0〜1.5㎝を目安にお選びください。通信販売でサイズを履き比べて選びたいという希望があればご相談ください。
※試着のみで、皺が入っていない状態であればサイズ交換も承っております。